◇ お米未来展講演②農水省が「やっぱりお米が地球を救う!」テーマに「みどり戦略」紹介

 4月15日に開幕した「FABEX(ファベックス)東京2025」の「第4回お米未来展」特別セミナーの続報。4月15日、農林水産省大臣官房審議官(技術・環境)の西経子氏が登壇し、「やっぱりお米が地球を救う!『みどりの食料システム戦略』のススメ」と題し講演。地球温暖化・人口減少・生産者の高齢化といった課題に触れつつ、日本の農業、とりわけ米産業がどのように地球環境問題に貢献できるのかを概説した。

みどりの食料システム戦略

 2050年までに農林水産業のCO₂排出を実質ゼロとすることを目標とし、化学肥料・農薬の使用削減や有機農業の拡大、食品製造業の労働生産性向上など14のKPIを設定して推進するもの。施策対象は、資材調達・生産・加工・流通・消費に至る「食料システム全体」に及び、全ステークホルダーによる取組みが求められている。
 特に水稲栽培においては、水田が景観や治水面で優れた機能(多面的機能)を持つ一方で、温室効果ガスであるメタンの主要な発生源であることが課題となっている。講演ではその対策として「中干し期間の延長」を紹介。加えて地域単位での有機農業の推進やスマート農業の導入などを通じて、生産性を確保しつつ脱炭素化を進める必要があると指摘。実際に環境負荷の少ない生産様式への転換が加速していると報告した。

みえるらべる

 環境配慮型農産物の認知拡大と消費喚起を目的に、農水省が導入したのが「みえるらべる」制度。環境負荷低減の取組み度合いを科学的に評価し、商品に最大三つ星のラベルで表示するもので、全国での普及が進んでいる。
 消費者調査では8割が「環境配慮型農産物を購入したい」と回答しているものの、これまで「当該商品が判別しにくい」という課題が存在した。こうした背景を受け、小売店、ふるさと納税サイト、外食事業者などで「みえるらべる」表示商品の活用が推進。農業者と消費者の新たな信頼構築の手段になっているという。
 また「みえるらべる」には、環境に配慮した農業の価値を可視化し、適正な価格形成と需要創出を狙う側面もある。流通・加工事業者にも参加を促しているとし、㈱神明(東京都中央区、藤尾益雄社長)が精米商品2アイテムで「みえるらべる」を表示した事例を報告した。

J-クレジット制度

 環境貢献を経済的価値に転換する枠組みとして、J-クレジット制度を紹介。これは、温室効果ガスの排出削減量を金銭換算し、企業などが購入することで生産者に還元する仕組み。水稲栽培では、「中干し期間の延長」によってメタン排出を抑制し、一定条件を満たせばクレジットを創出することができる。既に5万筆を超える水田で実施されており、農業経営の新たな収益源として関心を集めているという。

 最後には、戦略の根幹を成す「食料・農業・農村基本計画」や「クロスコンプライアンス」の試行、若年層を対象とした啓発プログラムを紹介。農林水産省は今後も、生産者、流通・加工事業者、消費者が一体となった取組みの推進を図るとともに、支援策を拡充することで、脱炭素社会に資する農業の確立を図っていくとした。

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