◇ 全米販記者会見②「米穀流通2040ビジョン」質疑応答
2024/6/14/ 14:00
全米販(東京都中央区、山﨑元裕理事長)記者会見の続報。「米穀流通2040ビジョン」説明後の、メディアからの質疑応答の内容を詳報する。
〈日本農業新聞〉ビジョンでは生産者との取組みも重要になる。米卸の団体として、全米販は生産者にどう接近していくのか。 また、全米販の存在意義という観点から、役所や全農とのやり取りについて触れていたが、例えばJAグループとの関係性などはどう変化していくのか。
〇 組合員企業の間でも、生産地との取組みはポツポツ始まっています。規模もエリアもバラバラですけれども、農業法人を持たれている企業、出資している企業、あるいはがっちり組んで取組みを進めている企業もあります。
一方で、課題としては、割と小規模な卸企業の場合、せいぜい1つの生産法人と、1か所で単一銘柄しかしか取り組めない、という問題があります。取引先のお客様はいろんな品種、銘柄が欲しいわけです。そんなときに、A卸、B卸、C卸……といくつかの卸がまとまって一緒に取り組めば、各社それぞれお付き合いのある生産者と繋がることで、取引先に対しても、色々な提案ができます。こういうことを小さくてもいいから少しずつ始めていきたい。あるいは今まで、例えばAという米屋がお付き合いいただいていた生産地に、「こういう包装でいいから、この卸も仲間だから一緒に入らせてよ」、そんなことから始められればと思います。裏を返せば、「なんでも自前主義はやめよう」ということです。
〇 JAグループとの関係性について。我々の組合員企業のなかでも、JAグループに対して喧嘩腰になってしまう方もいらっしゃるが、決して喧嘩相手ではなく、役割分担だと思っています。色々な組合員企業の実例を伺ったり、あるいは私もプライベート企業ヤマタネとしての経験もありますが、全農さん、あるいは農協さんがどうしても動けない、動きにくいことがあるように感じています。その代わり、我々民間企業だったら動けること、というのもある。ですので、それを勝手に進めるのではなく、「我々はこういう風に考えているから、こういう狙いでここをやりますよ」というのをやりとりしていけば、あえて言葉を使うなら、摩擦が起こることもないと思います。
稲作を守っていこう、できればもっと元気にしていこう、という目標は同じです。その中で、役割分担をどうするか。全農さんがやってくださって、我々にも応分の米を回していただけるなら、多分それが一番効率的でしょうが、地域によっても違うかもしれませんが、全農さんが動けないことがあります。であれば、それを我々がします、という話です。
話が少し逸れてしまいますけれども、従来、エンドユーザーと話すときには、「この産地はこういう土壌、水系、風土・気候で、こういう農法を取り入れいています、だからこの品種が選ばれて、美味しい米ができます」…こんなストーリーを求められていました。我々卸が産地と一緒に協業する時には、そういうストーリーを探そうとしていて、ここ数年取り組んできました。ところが、ユーザーの方とやり取りするなかで、いま求められてるストーリーが変わってきているのを感じます。
「この産地はこういうことに取り組んでいる、だから5年後も10年後も安心して米を生産できます」というストーリーが求められているんです。小売の方々からすると、いくらいい米が今年手に入っても、来年、再来年は作らないようでは、新たに取引先を探さないといけないわけで、困るわけです。こんな風にユーザーの求めるものも変わっていますが、全国全てのエリアにおいて、全農さん指導のもと、農協がリードしながら対応できるかというと、残念ながらそうではない。
また、ユーザーが求めていることというのは、我々が一番よく知っています。そこをまず我々が紹介することができると思っています。
〈日本農業新聞〉垂直方向の連携、さらに水平方向の連携という話があった。例えば今、青果物流通では、卸の再編が進んでいるが、このビジョンを通じて米卸も再編やグループ化が進んでいくのか。展望は。
〇 再編が進むかどうか、わかりません。ただ「グループ化」は出てくるかもしれない。地域も、規模の大小も関係ない、信頼関係で結ばれたグループ化、これは進むべきだと思います。もう一つ、我々にとって大きいのが「工場」です。古い資料によると、全体の精米工場の稼働率は50%に届かないというデータもある。一方で、我々民間が持っている全国の精米工場の老朽化は著しいのが現状です。ご存知の通り、建築費、資材費なども上がっているなかで、今の利益構造・稼働率で新しい工場を作るのは相当厳しいのが実情です。それであれば、共通の精米施設を持つということも、選択肢としては十分にありうると思う。あるいはどなたかが持っている工場を立て直す時に、共同でということもあるかもしれません。
それから、もう少し先のことを見据えれば、物流の問題も大変なので、産地サイドに工場を立てるということもあるかもしれない。糠を産地に置いてくるだけで、物流コストは1割削減できます。そういうことを皆で考えて、一緒にやるということは大切だと思います。そんなことを積み重ねた上で、組織あるいは会社の統合というのが出てくるのかもしれない。いきなり統合しても、そんなに良いことはないと思います。
〈日本食糧新聞〉パックごはんや冷凍米飯は伸びている。そういった加工をしている食品メーカーや、大企業との連携はどうか。
〇 我々米卸のなかでも、無菌パック米飯に取り組んでいる企業もあるし、OEM生産で始めている企業もあります。大企業という言葉がありましたが、資本関係でいくと米卸は飲み込まれるだろうと思います。メーカーさんで、「これからもっと米が重要になるから、米の部隊が欲しい、でも米の世界はムラ社会じゃないけれども、独特の文化があって、いきなり入っていくのは難しそう…」となると、大資本の方は米卸を買って傘下に置いた方が早いかもしれない。
米卸は怖がりなところありますし、動き方も分かっていないところありますので、例えばそういう(繋がりを)を紹介していく、あるいは事例をお伝えしていくというのは、我々の役割の一つかもしれません。先ほど申しましたように、このビジョンを関係する業界団体にはお伝えしていこうと思いますので、パイプができ、安心できるような関係ができていけば、ユーザーサイドの会社と我々の業界の会社との何らかの交流会のようなことができるかもしれない、と思います。
〇 今、(新しい取組みに)動き始めている企業は、30~40代の人が実質会社を回してるような会社。ただそういう会社は、残念ながら全米販に加盟していない企業に多いです。組合員企業でも、若手が活躍しているところ、会社のなかで実験をし始めたところは、動き始めているような気がしています。ただそれ以外のところというのは従来型からなかなか抜け出せないのが実情です。そこを怖がらずに動き始めなければいけない。だから、垂直でも水平でも、小さくていいので新しい取組みの実例を作って、こんな例あったよ、という成功事例として、全米販が組合員に伝えて行ければいいと思う。
〈食品産業新聞社(米麦日報)〉「野心的なシナリオ」では、2040年の需要量722tを目指している。日本は人口減少が進んでいるが、世界の人口は増加しているなかで、技術革新や多収米の生産、インディカの生産に取り組むなどによって、輸出を野心的にとらえた時に(もっと需要量の多い)シナリオもありえたのではないか。現状に近いこの数字を「野心的」と捉えていいか。
〇 野心的じゃないと思いますか(笑)。正解はないと思いますが、この722tという数字を持ってしても、「荒唐無稽だ」とあちこちから言われました。そういう意味では、野心的でいいのではないかと思います。
確かにすべての水田をフル活用すれば、もっと米を作れるとは思います。じゃあ誰がつくるのか。問題は面積ではないということです。畑地化の問題などもありますが、実はその辺の減少というのはそれほど問題ではない。もちろんIoT技術は進化しているし、スマート農業に期待するところもありますが、コストの問題も出てくるでしょうし、IoTを使うにも「人」が必要です。今後どれだけの方が水田に目を向けてくれるか、というのもあります。
〈新潟日報〉「現実的なシナリオ」の推計について。2030年代には生産量が需要量を下回ってしまうという推定があるが、組合員企業から「需給が逼迫していけば、価格が上がって作る人が増えるんじゃないか」という声があったという。そのほかにも「生産者が減っていけば1人あたりの生産量は増えていくのではないか」とか、色々考えられると思うが、どのように試算しているのか。
〇 試算は、ビジョンで示した通りなんですけれども、確かに米価が上がってくれば、作る方は作り甲斐が出てきます。ですが、その作り手は誰になるのか。従来の方々が戻ってくるとは思えないので、多分、新規就農の方々だと思います。まったく違う門外漢の方々が入ってきて、 全く違う観点で全く違う技術を持って作って日本の食料が回るのであれば、それはそれでいいですし、その可能性がゼロだとは思っていません。でも、全米販としての役割は、「まずは組合員企業が踏ん張ること」です。
また、新規の方が入ってくる時には、彼らと我々が一緒にやるべきだと思う。もしかしたらその新規の方々は、新しい技術、新しい発想を持っているかもしれないけれど、米農家の方々は米卸同様に慎重です。言葉は悪いですが、部外者が入ってきて、田畑を貸すかというと、難しいと思う。そこに、我々全米販が仲介することによって入りやすくなる。そういうことのタイアップには、可能性があると思います。
今、新規就農というと、果物関係、野菜関係がほとんどですね。なぜ稲作はいないのかというと、一つは儲からない、あともう一つは、参入障壁が非常に硬い・あるいは高いということです。だったら我々が手を携えて一緒に進むことが必要かもしれない。
新規参入とは違いますけども、今週農水省で「マイコス米」の勉強会が開催されますよね。 マイコス、結構広がっていますね。これには我々既存の流通業者が結構絡んでいるんです。でもマイコスを持ち込んだのは、(新規の)違う方です。そういう風に、IoTかもしれないし、作り方かもしれませんが、新しい技術を持っている方々と我々は手を組んで一緒にやる、それが目指すべきことだと思います。
〈新潟日報〉このビジョンを踏まえて、具体的な取組み内容は何か。また農家との協業といったときに、イメージとしては、その出荷先を踏まえた生産のコンサルティングのようなことになるのか。
〇 生産法人なのかJAなのか分かりませんが、AさんとBさんとのバンドルだと思う。生産者との協業については、コンサルではなく、実商売を想定しています。明確なユーザー、明確な産地がいらっしゃって、そこの中でウロウロしているのが我々ですね。我々はもう少し歩幅を広げて、生産の中、ユーザーの中に入っていく、もう少し長期的な視野での取引をしていく。あるいは約束ですよね、契約は概念的にまだなんですけど、信頼関係の構築はどうしても必要だと思う。例えば、価格はともかくとして、この取組みに関してはもう無条件で全部買取しますよ、とか。 生産者は生産者で新しいことをやらなくてはいけないので、彼らにもリスクをそれなりに取ってもらう。じゃあ中間流通はノーリスクでいいかと言えばそんなわけはないということです。
〈商経アドバイス〉「現実的シナリオ」で、「供給量が需要量を生産量が下回っていく」としている。その一方、今なお主食用の世界は国の政策で作付転換を図っている。このような、政策とビジョンとの関連、方向性の違いについてどう受け止めているか。この後、場合によると政策提言のようなことにまで可能性があるのか。
〇 国の政策と、我々のビジョンに書かれている「打ち手」は、ちょっと逆になるような感じがある、という点はおっしゃる通りなんですけど、でも違うなと思っています。国の政策はあくまで「食料」の話。われわれは「食品」の話をしています。同じ土俵に違う話、あるいは実は違う土俵の話が混在していると思うんです。
米は割と素材そのままで販売されているので、「食料」と「食品」の関係がめちゃくちゃ近く見えます。でも実は違うものです。繰り返しになりますが、政策の部分は食料としてあるべき姿をなさってると思います。今は平常時であり、我々が扱っているのは「食品」です。有事になった時にはそれこそ「食料」として国家統制が入るかもしれないけれど、平常時で我々は商売で米を「食品」として扱っているので、そこは質が違うということになると思います。
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