◇ 食品産業「取引慣行の実態調査」、小売側の改善傾向「続いていると見られる」

 (一財)食品産業センター(堀切功章会長=キッコーマン㈱会長CEO、荒川隆理事長)は6月19日、「令和5年度(2023)食品産業における取引慣行に関する実態調査」結果を公表した。食品製造事業者を対象に、大規模小売店による独禁法「優越的地位の濫用」にあたる行為の有無を調査したもの。
 小売業者との取引をめぐって、「かなりの改善が認められる」または「ある程度の改善が認められる」と回答した割合が計88.8%(前回比+0.3ポイント)と、前回調査と同水準だった。食品産業センターは「小売側の改善が認められる傾向は続いていると見られる」と分析している。
 今回から回答企業数を増やすため、小売業との取引がある企業がより増えるような対象選定を行ったことから、小規模事業者の割合が大幅に減少している。アンケート調査の回収数は増えたものの、前回調査に比べ、売上高10~500億円の企業数が厚くなった影響で、これまでの傾向が変化している点には留意が必要。調査は今年2月に実施し、446社(前回比+114)から回答を得ている。
 ここでは、概要を紹介する。

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《調査項目への要求・要請》
 前回調査に比べ、全項目が増加。「近年、減少傾向が続いていたが、今回調査では回答者数が増えるとともに、小規模事業者の構成が減少したことが影響した可能性がある」としている。

《要求・要請への対応》
 応じる(「全て応じざるを得ない」と「ほとんど応じている」の計)とした割合を見ると、協賛金、センターフィー、買いたたきは減少している。だが依然としてセンターフィーは他の項目に比べ、突出して高い。

《製品への適正な価格転嫁》
 「価格転嫁を要請した」とする回答は、全体で86.1%(前回比+6.0ポイント)とかなり増加した。このうち、「全て価格転嫁できた」が55.1%(▲0.8ポイント)と、およそ半分の企業は依然として全てを転嫁できていない。「7割~9割程度転嫁できた」は34.1%(+3.7ポイント)と、やや増加し、「1割~6割程度転嫁できた」は9.9%(▲2.9ポイント)と、微減した。「要請したが全く転嫁できなかった」は0.9%(16件)で、前回調査と同程度の割合だった。
 業態別に「全て価格転嫁できた」割合を見ると、「百貨店」70.5%、「通信販売」67.2%、「その他の小売業」61.2%と、転嫁が進んでいる業態があるものの、「コンビニエンスストア」55.9%、「食品スーパー」52.6%、「ディスカウントストア」41.4%と業態間の差が拡大している傾向にある。
 価格転嫁を要請しなかった理由は、全体では「原材料費、エネルギーコスト、労務費などの上昇分を自社努力で吸収している」との回答が80.7%と最も多かった。食品産業センターは「要請しなかった理由ではなく、要請しなかった結果として回答された可能性がある」とコメントしている。

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