◇ 農水省「コメニ」が「米粉」講演会
2024/7/19/ 16:00
農林水産省は7月18日、都内で「米粉」をテーマに講演を行った。学校や病院、事業所を対象に給食事業を展開するシダックス㈱(東京都渋谷区、志太勤一社長)が、社内の栄養士を対象に実施したセミナーで登壇したもの。省内で米粉利用拡大プロジェクトに取り組む有志プロジェクト、米粉営業第2課(通称コメニ)のメンバー、齊木和恵氏と、倉持未夢氏が、「お米と築く未来~なぜ、いま『米粉』なのか~」と題して講演し、「米粉パンを食べることで、食料自給率を改善できる」と呼び掛けた。シダックスは毎年、社内でレシピコンテストを実施しており、今年のテーマ食材が「米粉」であることから、米粉について学ぶ機会を作ったという。その講演の内容を2回にわたって詳報する。
《米粉消費拡大に向けて活動する理由》
△「コメニ」とは?
コメニは、農水省内の有志のプロジェクト。食料の安定供給を図るうえで、100%国内で自給可能な米の消費拡大は重要。しかし、生活スタイルの変化などで、米の消費量は減少傾向で推移している。そのなかで、米の新たな消費の形として、米粉の利用拡大には期待が持たれている。
一方、米粉の利用拡大のためには、 米粉を利用した商品が生まれ、それが消費者に支持され、定着することが望まれるものの、まだまだ利用方法や価値が十分に認知されていないなどの課題があるのも実情。そこで、(シダックスの)皆さんのような事業者の方々に、米粉の利用についてさらに提案していくことを目的に、所属部署関係なく集まった農水省内の有志でつくったのが、「米粉営業第2課」、通称「コメニ」だ。
△米の消費量の推移
今、日本における一人あたりの米の年間消費量は、昭和37年(1962)の118.3㎏から、令和4年(2022)には50.9㎏にまで減っている。また、水田の作付面積も、平成22年(2010)の158万haから、令和4年(2022)125万haと、急速に減っている。しかし、先ほども触れたように、米は国内で唯一自給可能な穀物であり、食料安全保障の観点からもとても大切。また、水田には、多様な生物を育む機能、土砂崩れや土壌流出を防ぐ機能、景観保全する機能、伝統文化を継承する機能など、「多面的機能」と呼ばれる様々な役割がある。このように重要な水田を守るために、「米を食べること」に加え、「米粉の利用拡大をすること」が必要だと考えている。
《進化する米粉》
△製パン用、製菓用……色々な種類がある!
日本で、米粉用の米を作り始めたのは15年ほど前。当時を知る人からは、「米粉パンは美味しくなかった」という話をよく聞く。米粉を「小麦粉の代替」として考えていたこともあり、用途に適した調理方法が開拓されていなかった。その結果、「あまりおいしくない」ということになり、ブームも下火になってしまった。それが今また、米粉用米の生産量、需要量は右肩上がりで伸びている状況だ。研究が進んで、パン用、製菓用など米粉用米の品種開発も進んだことが背景にある。
たとえば、米粉パンに適した品種は、「ミズホチカラ」「笑みたわわ」「ほしのこ」「こなだもん」など。それぞれの違いを見る時に重要なのが、「澱粉損傷率」だ。これは言葉の響きから良いイメージを持ちにくいが、 「どれだけ粉が細かくなっているか」の割合を示す言葉で、マイナスイメージには取らないでほしい。この澱粉損傷率が高いほど、水分を抱え込む率が増加して、「しっとり感」が増す。ただし、しっとり感が増えるとその分が重くなるので膨らみにくい。 そういったことから、パン作りには澱粉損傷率の低い米粉が向いている。もう一つ、大切なのがアミロース含有率。アミロースには澱粉の粘りを抑える効果があり、 アミロース含有率が高い米粉は、米粉パンや米粉麺に向いていると言われている。こういったことを踏まえて、料理に使う際は、何を作るのかによって米粉を使い分けるのが成功するためのコツになる。
ちなみに、同じ製パン用の米粉でも、例えばA社の米粉とB社の米粉で、出来あがりが違うものになってしまうことがよくある。これは「米粉あるある」。なぜ同じ「パン用」を使っても違う出来あがりになってしまうかというと、製粉会社によって米粉の水分量や製粉方法が違うから。失敗を避けるには、 最初に成功した時に使用していた米粉を使い続けるのも一つの手だ。
《米粉の特長》
△グルテンフリー、低吸油、機能性…メリットがたくさん
米粉には、多くの特徴、メリットがある。
①もっちり・しっとり食感
米粉で作ったパンは「もっちり」としているのが特長だ。水を吸収しやすいという特性があるので、スイーツなら「しっとり」した仕上がりになる。ショートケーキやスフレなどのお菓子もお勧め。もっちりとして食べ応えがアップする。パンケーキやお好み焼き、チヂミなどは表面がカリッと、中はもちっとした仕上がりに。
②グルテンフリー
グルテンを含まないので、食物アレルギー対応などの需要にも向いている。
③機能性
玄米粉の場合は、食物繊維に加え、ビタミンB、ビタミンE、ナイアシンなどのビタミン類、抗酸化物質であるフェルラ酸やフィチン酸、 血糖状況を抑制するGABAなどが豊富だ。玄米ご飯はちょっと苦手という方も、 玄米粉を利用したお料理なら食べやすいはず。
④低吸油でさっぱり
小麦粉よりも油の吸収率が低いので、カロリーオフになるのはもちろん、天ぷらや唐揚げなどの揚げ物を米粉で作ると、冷めても「べちゃっ」とせずに、サクサク感が長く継続する。
⑤調理、後片付けの負担軽減
小麦粉と異なり、ダマにならないので、粉をふるう必要がなく、水で溶く必要がないので、直接料理に振り入れられる。調理後の片付けの負担も少ない。先ほど説明したように、直接振り入れられる、粉をふるう必要がないので、使う道具も少なくて済む。それから、(ダマにならないので)調理後のボールや器なども水に少しつけておくだけであっさりキレイに。時間と水の節約になる。
⑥食料自給率アップ
国民が国産米粉パンを1か月に5枚食べると、 日本の食料自給率が1%アップするという試算もある。 米粉パンを食べる時に、日本の農業と私たちの未来の食を守ってるんだということも意識していただけると味わいも深くなると思う。
△コストを抑えることもできる
小麦粉と比較しての調理実験を行った。ポークソテーを、米粉を使用して作った場合と、小麦粉を使用して作った場合の違いを調べたもの。まず豚肉を300gずつ2つの袋に入れ、米粉と小麦粉それぞれ30gを加えて揉み込んだ。すると米粉を使った方は肉のピンク色が透けて見えるくらいの薄付きに仕上がった。一方、小麦粉の方は、肉にしっかり粉がついて、真っ白い状態。それを、それぞれ大さじ1のキャノーラ油を入れて焼いた。
すると、米粉を使用した方は、大さじ1でしっかり焼けたが、小麦粉の方は途中で油が足りなくなり、さらに大さじ1追加した。火が通った後、米粉の方はフライパンを傾けると油が多少残った。一方、小麦粉の方は、しっかり油を吸い込み、フライパンを傾けても油は残っていなかった。また、調理過程で使った袋に残った粉の重さを見ると、米粉は10g、小麦粉は5g残った。この調理テストから、 使用する肉の量が同じでも、米粉と小麦粉で、使用する粉と油の量が違うことが分かった。米粉は「小麦粉に比べて高い」といったことも言われているが、粉や油の使用量が少なくて済むので、コストを抑えることもできる。
△米粉タイムスで米粉レシピをチェック!
ここまでお伝えしたような米粉の魅力や、米粉を使ったレシピや、米粉を使った料理が食べられる飲食店などを、「米粉タイムス」というサイトでも紹介している。ぜひ、参考に見てほしい。
〈続〉
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