◇ 第12回「米産業懇話会」続報、全米販山﨑理事長「ビジョン踏まえ中計策定中」

 (一財)農政調査委員会(吉田俊幸理事長=高崎経済大学名誉教授)が8月19日に開いた第12回「米産業懇話会」の続報。全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)が去る6月12日に公表した「米穀流通2040ビジョン」を、山﨑元裕理事長(㈱ヤマタネ代表取締役会長)自ら報告。これに対する質疑応答を紹介する。

 ――産地銘柄に依存した商売からの脱却との話があったが、産地側の思惑とは逆方向なのではないか。《食品産業新聞社米麦日報部長・大島翔平氏》
 山﨑
 例えばブレンドは、産地から見れば「悪」だろう。単一の品種改良は、産地にのみ出来ることだ。それは食味であったり気候に合わせた改良であったりするわけで、流通側からアイデアを出したりはするが、実際の開発はどうしても産地が主体とならざるを得ない。しかし消費者が求めているのは、あくまで「おいしいごはん(米飯)」なのであって、「魚沼ではない」ことを指摘する必要はある。「ブレンド」は決して悪ではないのだが、かつての「格上げ混米」という〝闇〟によって自ら「悪」にしてしまった経緯がある。よく言う話だが、コーヒーはブレンドが当たり前だし、小麦もそうだ。米だけブレンドが「悪」とされてしまう。産地にとっても決して「悪」ではないはず。産地には単品の品種改良を進めてもらい、ブレンドは流通が取り組むのが自然な姿なのではないか。

 ――「野心的シナリオ」は、現在の政策体系では実現不可能。現在の農政に物申すことはないのか。《元米穀新聞記者 熊野孝文氏》
 山﨑
 農政に対して「ここをこうしてくれ」といった要望は、今のところない。ただ、我々はあくまでサプライヤーなのであって、つまり「食〝品〟」を扱っている。ところが国で話題にのぼると、同じモノを扱っているはずなのに、「食〝料〟」になってしまう。米屋同士で話をするときも、食品が食料になってしまい、一体どちらの話をしているのか分からなくなってしまうことはままある。国に対する要望があるとすれば、こと「食品」を扱う場合は、放っておいて欲しいということ。「食料」を扱う場合は、私どもにも一定程度の責任があるから、いずれ要請なりする場面が出てくると思う。

 ――全米販がこのようなビジョンを示したことはかつてなかった。一歩前進と評価したい。是非これを前に進めていただきたい。今後、何をいつまで取り組むのかといった具体的な数値目標に落とし込んでいくのだろうが、それは是非公表していただきたい。そうすれば後戻りできず、自らを追い込むことにもなろう。また、これは提案なのだが、そろそろ米「卸」という言葉の使い方をやめてはどうか。《元伊藤忠食糧社長・近藤秀衛氏》
 山﨑
 実は平成19年(2007)のことだったか、全米販で中計を策定したことがあった。しかし今や影も形もない。今回はそうならないようにしなければならない。「米穀流通2040ビジョン」に基づく中計は、今まさに策定しつつあるところなのだが、その前に理念体系を整備しつつある。その上で中計ということになるのだが、今年度中に策定を完了し、動き始める(中計の初年度)は来年度から、ということになると思う。米「卸」については……申し訳ない。私自身、使っている。おっしゃる通り行政上の区分も区別もなくなっているのだから、「卸」を使うべきではない。徐々になくしていこうと思う。まずは「書き物」からか。

 ――「野心的シナリオ」は面白いが、特に産地支援の件りで具体策が欲しい。農家人口の減少要因には様々あるが、水稲の場合、水管理が大変な点が一つある。水源を確保できている地域ならいいが、不利な地域もある。そうしたところへの支援が欲しい。でないと生産力増強といっても現実的でなくなる。《滋賀県稲作経営者会議会長・久保田九氏》
 山﨑
 一挙に全ては無理な話で、少しずつ取り組んでいく。まだ「点」の段階ではあるが、すでにいくつか(産地支援の)事例もある。一例として、ご存知かとは思いうが、マイコスというのがあるのだが……
 ――うちでも取り組んでいる。
 山﨑
 それはいい。まだ食味も単収も判然としないが、うちの組合員でも取り組んでいる例がいくつもある。結果次第では「線」から「面」へと拡がっていくものと楽しみにしている。

 ――同じ米流通業界とはいえ、全米工の場合は主食と違って、相場と現物だけの業界。あえて言えば、そのままではどうしようもないもの(特定米穀)を価値あるものに作り替えていく商売とも言える。そのため、どうしても先を見越すことができない。《全国米穀工業協同組合理事長・大嶋衛氏》
 山﨑
 先ほどの「卸・小売」と同様、「主食・特米」も、いつまで区別を続けたものか。どちらも価格決定権が全農にあることは共通しており、連携の余地はあるのではないか。

 ――需要減に伴い農地の荒廃が進んでおり、これが戻ることはないと懸念している。一方で需要は、確かに国内は人口減があるから減る一方だが、グローバルにみればジャポニカに伸びがみられるのが光明だ。《元全国稲作経営者会議会長・佐藤正志氏》

 ――「野心的シナリオ」のなかで、輸出を2020年の5万4千t・613億円から最大343万t・2兆7千億円に伸ばすとある。この根拠は?《元全国米穀工業協同組合理事長・中島良一氏》
 山﨑
 明確な根拠があるわけではなく、言わば希望的な数値と考えていただければ。荒唐無稽に見えるかもしれないが、世の中にはもっと大きな数字を出しているところもある。いずれにせよ人口減を背景に国内の需要増が見込めない以上、輸出にしか光明を見いだし得ない。ただしこれは最終製品の輸出であって、原料の輸出ではない。また加工品としてもそうだが、極端に言えば食品でなくとも構わないと思っている。

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