◇ 神明HD、「アグリノート」ウォーターセルの第2株主に

 ㈱神明ホールディングス(兵庫県神戸市、藤尾益雄社長)は3月14日、営農支援ツール「アグリノート」を手掛けるウォーターセル㈱(新潟市、渡辺拓也社長)との資本業務提携を発表した。既存株主からの持分譲渡によって、神明HDはウォーターセルの第2株主となる。

 今回の提携に伴う具体的な協業内容は今後詰めるとしているが、神明HDの藤尾社長は「一番の目的は生産者がしっかり農業で儲けて、もっとモチベーションを上げて、本当に農業未経験者でもやれる農業にしていきたい。それをウォーターセルと実現し、生産者の経営改善、持続的な成長を支援していきたい」と話しており、ウォーターセルの渡辺社長も「神明グループが川上事業で培った現場での知見と当社の情報プラットフォーム・開発力を融合させて、農業界の様々な課題に対してソリューションを提供していきたい」と意気込んだ。

 2012年にリリースされたアグリノートは、農作業や圃場の管理、従業員間の情報共有、圃場・品目別の収支管理などをパソコンやスマートフォン上でサポートするツールだ。幅広い品目に対応しており、全国2万8,000組織以上を数える利用者の約4割は水稲農家だ。
 会見でウォーターセルの渡辺社長は「リリースから13年経つが、2か月で1,000組織ほどと、いまだに過去最高ペースでユーザー数が増えている。大規模化や次世代へのノウハウ継承という農業現場の課題が深刻化していることの証左だろう」と語る。

 また、藤尾社長は事業紹介の中で、神明HD内に「川上戦略事業本部」を設置すると表明(4月1日付)。生産現場の人材育成や作業代行、人材派遣などのほか、営農管理システムの提案、農機具の販売やリース、資材購入――といった大規模化支援、太陽光発電やカーボンクレジットなど農家の収入増に繋がる提案までを行うとしており、川上に近い子会社の管理もこの本部が担うという。「グループのヒト・モノ・カネの経営資源は川上に繋がるところにだけ投資していこうという我々の決意だ。それによって日本の農業を守り、我々神明グループを成長させていく」(藤尾社長)。

 さらに神明グループ全体の令和7年(2025)3月期見通しについて語り、これまで〝最大・最強のアグリフードバリューチェーン〟実現に向けて目標としてきた「総額売上高5,000億円」を超える「5,500億円」ほどで着地する見込みだと語った(前期は4,889億6,200万円)。
 これに関しては足下の米価上昇にも触れ、「㈱神明単体で売上高1,400億円、うち米が1,200億円以上だが、今の単価だと約1.5倍の全体2,000億円弱、米1,700億~1,800億円まで行くんじゃないか。しかし、物量ベースで見れば▲7~8%になりそうだ。確かにグループとしても神明としても過去最高売上・利益になりそうだが、量が減っていては決して未来に繋がらない」と危機感を顕わにした。

 このほか、現在の米騒動については「(備蓄米放出で)少しは店頭価格が下がるのではないか。しかし根本的な問題解決ではないので、大幅に下がるとか、以前のような感覚に戻るということはないだろう」との見通しを示したほか、「令和の米騒動で衝撃を受けたのは、『あと5年、10年後に来るだろう』と思っていた未来がこんなに早く来たということ。私は今年還暦だが、農業の衰退速度を考えるとここ10年間を全力で走り続けなくてはならない、本当にもう1日1日を大事にしないと間に合わないと思っている。新たな中計をこれから作るが、2035年の売上高目標は1兆円を視野に入れていく。それくらいの規模で進めないと、農業を守ることができない」などと熱を込めた。

ごはん彩々

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