◇ 10月指針で漸減需要貫き令和7年産生産量683万t据え置き、年明け早々ふたたび食糧部会

 農林水産省は10月30日、いわゆる10月指針、つまり基本指針(米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針)の変更を明らかにした。それによると需給見通しでは、ダウントレンドの需要量見通しを揺るがせず、令和7年産主食用米生産量(かつての生産数量目標)に「令和6年産の生産量実績(9月25日現在作柄)と同水準」の「683万t」を据えた。したがって令和5年産からすれば初の〝増産方針〟を打ち出したことになる。これにより昨年7月~今年6月の「イレギュラーな需要増」を取り返し、再来年6末在庫は「182万t」に回復する見通し。ただし、「今後、令和6年産米の収穫量の確定や精米歩留まり、在庫、消費の動向などを見極め、令和7年(2025)の年明け以降(3月指針よりも前)に食料・農業・農村政策審議会食糧部会を開催し、令和7年から令和8年にかけての需給見通しの見直しについて、改めて諮問する」と異例の附帯事項を設けている。同日の食料・農業・農村政策審議会の食糧部会による答申に基づくもの。

 まず今年6月末在庫は、生産者在庫の下方修正に伴い3万t下方修正して「153万t」とした。これに伴い、昨年7月~今年6月の需要量は3万t上方修正して「705万t」とした。令和6年産米の生産量には9月25日現在作柄に伴い、主食用予想収穫量14万t上方修正をそのまま当てはめ「683万t」とした。
 今年7月~来年6月の需要量見通しは、トレンド(回帰式)で弾き出した1人あたり消費量に人口を乗じる手法を揺るがせず、ただし人口を最新値に更新した結果、1万t上方修正の「674万t」(前年比▲31万t)を置いた。この結果、来年6月末在庫は10万t上方修正の「162万t」となった。
 需要量見通しを従来のダウントレンド(毎年およそ▲10万t)に乗せる格好となった理由を農水省は、令和5年産米の需要量が増加した3つの要因(①値ごろ感、②歩留まりの減少、③インバウンド)は、令和6年産米ではいずれも解消、もしくはダウントレンドを覆すほどではないと説明。また「過去にも需要量が30~20万t減少した年はある」とした上で、「違う見通しを立てるほどの材料もない」コメントしている(農産局・武田裕紀企画課長)。

 令和7年産主食用米生産量に「令和6年産の生産量実績(9月25日現在作柄)と同水準」の「683万t」を据えたものの、来年7月~再来年6月の需要量見通しには従来通りのトレンド×人口で弾き出した「663万t」を据えたため、再来年6末在庫は「182万t」に回復する見通しとなった。
 農水省は、生産量を据え置いた理由として「在庫率」を取り上げる。「182万tだと在庫率は27.4%となるが、過去にも在庫率が26~28%の年はあった。いずれの年も需給に過不足があったわけではないので、今年と同じ規模を生産していただくのが現段階では適当だと考えている」と説明している。

 また農水省は、「令和6年(2024)端境期の需給状況に関する分析」結果も提示。端境期に品薄状況となった要因として、買い込み需要に各流通段階からの供給が追い付かなかったこと、品薄に関する情報発信の初動が8月下旬だったことなどを挙げた。
 農水省の今後の対応としては、「情報収集・発信の強化」を掲げる。「正確な情報を分かりやすく発信することで、消費者に安心して行動いただく。端境期は必ず来るものなので、早めの発信が求められている」と強調した。

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