◇ ヤマタネ持続可能な稲作研究会③ 河原田社長「米は安いから、ではなく、主食だから食べるものに」
2025/3/14/ 11:00
㈱ヤマタネ(東京都江東区、河原田岩夫社長)が開いた第2回持続可能な稲作研究会の続報。最終回は研究会終了後に行われた記者会見についてお届けする。
回答者は秋田ふるさと農協の佐藤誠一組合長/新みやぎ農協の鈴木千世秀副組合長/㈱ヤマタネの河原田社長/ヤマタネの星野裕之食品本部長。
【記者】産地とヤマタネは萌えみのりの取り組みを長年進めてきたが、今回の米騒動に際して成果のようなものは。また、現在は西友などに台湾産米が並んでいるが、その反響があれば。
【ヤマタネ・星野氏】まず萌えみのりは産地の方々と長年取り組みをさせていただいている。今年の米不足に関して言うと、全体量から見れば(取り組み量は)ほんのわずかであり、そもそも実需まで売り先が全て決まっているものなので、不足分を埋められるかはまた別の話だ。
また、台湾産米は国産よりも価格が一段低いので魅力はあるし、非常に好調でもある。西友などの小売からは「あるならもっと欲しい」と要望を頂戴している。しかし、SBSを振り返ると第3~4回入札はマークアップがかなり上がったので、次のクロックでは少し値上がりするかもしれない。
【新みやぎ・鈴木氏】萌えみのりはヤマタネさんとの長年の繋がりがあり、生産者もそれを信頼して農協に全量出荷している。そうして我々が集荷したものはそっくりそのままヤマタネさんに出しているので、どこかで行方不明になるようなことはない、と一応お伝えする。
【ヤマタネ・河原田氏】先ほどのパネルディカッションでも申し上げたが、国産米が外国産米と比較されるようになることは決して悪いことではなく、生産者が丹精込めて作った安心・安全で美味しい国産米を見直す機会になると思っている。
【記者】米騒動に関し、ヤマタネは令和7年産で具体的にどのような対策を打つのか。また、産地の受け止めは。
【ヤマタネ・星野氏】6年産から振り返ると、出来秋の時点で5年産が無かったので、千葉の早場米で売場を何とか埋めていた。その後、各産地から6年産が出始めて、全国作況も101ということで少し安堵していたのだが、どんどんスポット価格が上昇し、「これはおかしいぞ」と。最近は備蓄米の放出報道で少しくらい価格が下がるかと思っていたが、モノも全く出てこない。このままでは5~6月にも枯渇する銘柄が出てきかねない状況だ。
対策としては、小売に特売をやめてもらうこと、そして規格を5㎏袋から4㎏袋に変更してもらい、それでも不足しそうであれば2㎏袋にしてもらうことなどをお願いしているところだ。はたして備蓄米をどの程度入手できるのかは分からないが、全体の状況を見ながら作戦を練っており、7年産は産地とコミュニケーションを取っているところだ。
【新みやぎ・鈴木氏】米騒動に関して一言申し上げると、結局のところ、モノが集まらないのは全農の方針に原因があると思っている。15,000円の概算金を提示しても商系集荷業者は20,000円を出してくる。本気に集荷するのであれば、そこで我々が21,000円で買えるようにしなくてはならないのだ。それでも、我々の安い概算金に対して(昨対)82~83%ほど出荷してもらうことができた。生産者には感謝の気持ちしかない。
【秋田ふるさと・佐藤氏】これまで、我々農協は「米は集まってくるもの」と思っていたが、これからは集めに行かなければならない。現在の米騒動は流通の本流が乱れた――秩序の乱れのようなものだと思っている。その本流が古いことが原因にあるのかは分からないが、今日示されたような流れが未来の本流になっていけば良い。やはり、これまでは当事者である末端の集荷関係者の見通しが甘かった面もあると思う。
【記者】米騒動に関してヤマタネに。卸として、どういった形で消費者とコミュニケーションを図っていきたいか。また、騒動の鎮静化には小売の役割も重要となるが、期待するところは。
【ヤマタネ・河原田氏】まず小売に対するアプローチだが、やはり米は生産が継続されて成り立つビジネスだとしっかり理解してもらうことに力を入れている。実際、それを理解して産地とリレーションを長年築いてきた小売の中には、昨年の米騒動の真っ只中でも棚を切らさず乗り切ったところがあった。
現実には「米はとにかく安く仕入れる」が信条の小売もいるし、喉元を過ぎれば騒動を忘れてしまうかもしれない。だが、そういった小売にも「生産者の再生産価格を守っていかないと皆さんは米が手に入らなくなりますよ」というメッセージが非常に説得力を持って伝わるようになった――これは大きな転換点ではないか。5㎏4,000円はかなり高い値段だと思われるが、「茶碗1杯なら約50~60円だよ」と消費者にも伝えなくてはならない。
今までは「麺やパンと比べて割安だから食べましょう」と価格で勝負していたが、我々は「〝安いから〟ではなく〝主食だから〟食べましょう」という戦略に変えていく。
〈了〉
