◇ 農水省・コメニ講演会で質疑応答、「米粉パンが膨らまない!どうすればいい?」

 農林水産省の有志プロジェクト「コメニ」が、シダックス㈱(東京都渋谷区、志太勤一社長)の社内栄養士を対象に行った講演、「お米と築く未来~なぜ、いま『米粉』なのか~」の続報。参加者との質疑応答の模様を詳報する。ここからは講演した齊木和恵氏と、倉持未夢氏に加え、農水省農産局穀物課米麦流通加工対策室の葛原祐介室長も登壇している。学校や事業所での給食のメニュー開発などに携わる現場スタッフからは、「蒸しパンを作ろうとしたら膨らまず、ういろう状になるのはなぜか」など、具体的な悩みも飛びだした。講演、質疑応答の模様は、YouTubeにアーカイブされているので視聴も可能。


Q.米粉と小麦粉の違いは。
A.大きな違いはグルテンの有無。米粉はグルテンがない分、生地を作ったり空気を溜め込むのが難しい。 一方で、グルテンがないということは、アレルギーの原因がないということでもあり、食感として軽さを出すことができ、ダマができない、片付けが楽という特徴もある。粒の硬さにも違いがある。小麦は柔らかいので粉にしやすい。一方、米は硬いので、粉砕する際に澱粉損傷が起こりやすい。澱粉損傷が起こると水を含みやすくなるが、それにより、パンの場合には「しぼみやすい」という原因にもなる。しかし、その特性は、お菓子に混ぜて使えば「みずみずしく仕上がる」というメリットにもなる。小麦粉も米粉も、特徴を生かして調理に使っていくことが望ましいと思う。(齋木氏)


Q.米の生産は今後、日本国内でどのように変わっていくのか。
A.一介の職員には大きすぎる話だが…。どのような姿になるとしても、需要に応じた生産がなされていくということ。もし消費者の皆さんがお米を食べてくれなければ、 それだけお米は生産されなくなってしまうし、食べてくだされば、それだけ生産は守られる。また、消費者にとっては、より低価格な方がいいので、 低コストの生産が必要になる。そのためには、農地をより集約して作業できるようにし、 スマート技術などを活用していくことが重要。さらには、持続可能な農業のためには、より環境負荷の小さい生産が求められる。農林水産省では、令和3年(2021)5月に、「みどりの食料システム戦略」を策定しており、温室効果ガスの排出抑制、化学肥料の低減、 有機農業の普及などに取り組んでいる。
 大事なことは、農業生産は、一度止まれば簡単には取り戻せないということ。農地も人も取り戻すことはなかなか難しい。 未来の食料安全保障は、今私たちがどのような消費をするのかにかかっている。 そのためにも、皆さんにぜひ米を食べていただきたい。粒の形での消費が難しければ、粉の形でも食べていただきたいというのが、私たちの思い。とはいえ、望まないものを無理に食べるわけにはいかないので、 どうすれば美味しく食べてもらえるか、それを皆さんと一緒に考えていくために「コメニ」は活動している。(齋木氏)


Q.米粉にはパン用、製菓用などの種類があるが、どういった違いがあるのか。
A.パン用と製菓用では、主に粉としての細かさや成分に違いがある。種類によって澱粉損傷度であったりアミロース含有率が異なり、吸水率にも違いが生じる。さらには製造企業によっても差が生じることもあるので、用途に適したものを適切にご利用いただくとよいと思う。(倉持氏)
 補足すると、メーカーによっては、用途別の基準をここのパッケージの裏に載せている。製菓用、パン用、麺用の3種類に分けて書いている場合が多く、その分けているポイントがアミロース含有率になる。澱粉の中には、アミロースとアミロペクチンがあり、アミロースは構造を支える力を与える成分になるので、アミロース含有率が少ないものを製菓用として使い、中くらいのものをパン用、多いものを麺用…といったように分けてはいることが多い。パン用、製菓用といっても色々使い方もあるので、水分を含む特性なども含みながら、一番適したものを選んでほしい。(葛原氏)


Q.米粉パンを作る際、発酵しにくく上手にできない。また米粉蒸しパンを作ると膨らまず、ういろう状になってしまう。作るうえでポイントがあったら教えてほしい。
A.一般的に、小麦よりも米粉のほうが(適度な)発酵が難しいと言われている。グルテンがないため、発酵しすぎると空気をとどめておく力がなく、穴が開いたような状態となって、 焼いた時に沈んでしまうというのが原因なのではないかと言われている。
 それによって蒸しパンを作ると、ういろうみたいになってしまったり、 発酵がうまくいかない原因になっていると考えられる。加えるぬるま湯の温度や、外気温、湿度などによって発酵時間は異なってくるが、1.5~2倍程度の膨らみとなるようにとよく言われている。
 調理の際の注意点の一つ目は、まずは発酵のしすぎを防ぐこと。発酵中、今、どれだけ膨らんでいるのかをよく見て、発酵のしすぎを防いでいただきたい。常温でも発酵が進んでしまうことがあるので、オーブンなどで発酵させていた時は、冷蔵庫や冷凍庫、 空調の効いた部屋に移動させるなど、その後の発酵しすぎないように細心の注意を払うとよいと思う。
 二つ目は、よく混ぜること。米粉は水を吸収するのに時間がかかると言われているため、しっかり生地を混ぜて水が均一に馴染むようにすると、発酵のムラ防止に繋がる。
 三つ目は、乾燥を防ぐこと。米粉は乾燥しやすいとも言われているため、濡れ布巾やラップなどを随時かけて、乾燥させないように注意していただくとよい。
 「食パンは難易度が高い」という感想もよく聞くので、 バゲットや丸パンなどから挑戦していただくのもよいと思う。(倉持氏)
 最近、パン用にミズホチカラや笑みたわわなど、新しい米粉用米の品種が登場している。そういう品種だと、実はちょっと米自体が柔らかい。そのために、砕きやすく、澱粉損傷が少なくなり、水を含みにくい。パンは膨らんだ後に、特に水を含むと自らの重さで沈んでしまう。 だから、(米が硬く、澱粉損傷率が高いため、水分を含みやすい)従来の米粉で作るとあまり膨らず、ぎゅっと詰まった印象のパンになることがある。そういう意味では、米粉100%で作るなら、水を含みにくい性質を持った、専用品種を使うのが一つの手だ。(葛原室長)

観戦記》
 このほか、食のプロである聴講者からは、米粉パンの調理過程の課題(米粉蒸しパンがうまく作れなかったのは、材料を混ぜた後に時間をおいたことが原因か?)を問う質問が出た。受けて立った葛原室長は、「そうですねえ…」と数秒黙考ののち、「すみません、分からないです」と正直に申告。「米粉の調理は、今まだ、歩み続けている途上。皆さんも、ぜひ米粉の調理にトライしていただくと、頑張ればすぐに専門家になれるかもしれない(笑)。もしご興味ある方は、ぜひ色々試していただいて、(分かったことをコメニに)教えていただけるとありがたいと思う」と受けた。農水省のお役人である室長自ら、蒸しパンの調理方法を問う質問に料理研究家のごとく懸命に立ち向かう姿に、「コメニ」の本気が垣間見えた!と感じた。

後列左から、シダックスコントラクトフードサービス㈱事業サポート部 MD・CSチーム長澤千裕課長、シダックス㈱迎英子執行役員・品質管理室室長、前列左から、農水省葛原室長、大臣官房秘書課齊木氏、大臣官房広報評価課倉持氏、農産局穀物課消費流通第1班石田嘉郎課長補佐

ごはん彩々

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