カツオブシムシ
2024/6/05/ 17:29
Dermestidae いわゆる貯穀害虫の一種。もともとは名称の通り、鰹節を好む害虫で、手近に鰹節がなければ米にいく。ただし、日本では(貯穀害虫としては)ほとんど被害例がない。
平成15年(2003)、日本は農薬にポジティブリスト制を導入した。中国をはじめ海外からの輸入農畜産物・食品に様々な不手際が頻発したことが発端だった。同年、中国は(どう考えても明らかな対抗措置として)検疫制度を改正、「輸入実績がない、またはわずかな輸入実績しかない植物については、中国自身がPRA(病害虫危険度解析)を実施しなければ輸入を認めない」ことになった。
この時点で、日本から中国への米の輸出実績は5年遡っても21tしかなかったので、さしたる痛痒には至らなかったものの、輸出相手国として中国はやはり魅力的。平成19年(2007)になって、当時の松岡利勝農相が、検疫条件を詰めることで、中国の重い門戸をこじ開けた。その際の条件の1つがカツオブシムシなどの燻蒸だった。
正確にはカツオブシムシ「類」で、中国が条件に掲げたのは3種。「ヒメマダラカツオブシムシ」は本州・九州に生息が確認されている。「カザリマダラカツオブシムシ」は、小笠原や奄美など一部島嶼部に生息してる〝らしい〟。「ヒメアカカツオブシムシ」は、数十年前に外来侵入の例があった「らしい」が、今は絶滅している。ただ、絶滅した事実は確認していない。何故なら確認には、莫大な費用と手間がかかるから。
検疫条件を問題視しているため、まず籾でも玄米でもなく精米輸送に限ることで、水田病害虫を排除。その上で排除すべき貯穀害虫として、カツオブシムシ類のほか、イネ籾枯細菌病菌、イネ壊疽モザイクウイルスをあげた。これらを排除するための措置として、トラップ(誘引剤)を仕掛けた上で1年以上にわたる無発生の確認と、燻蒸設備の設置を確認した指定精米工場のみに輸出を許可する仕組みを設けた。当時、この条件に合致するのは全農パールライス東日本㈱(現・全農パールライス㈱)神奈川工場だけだった。
それから11年後の平成30年(2018)5月、検疫条件となる対象害虫にグラナリアコクゾウムシとTribolium destructorが追加されたのと同時に、指定精米工場にホクレン・パールライス工場(北海道・石狩市)と㈱神明きっちん・阪神工場(現・㈱神明精米西宮浜工場、兵庫・西宮市)が追加され、3工場体制となった。
ところが同年8月、全農パールライス㈱神奈川工場から、ヒメマダラカツオブシムシの大量発生が確認され、同工場は輸出関連業務を停止した。令和3年(2021)初頭から再開している。