◇ 石破総理かかげる「米増産」への対応 明言避ける、江藤農相就任会見

 第2次石破内閣で農相に就任した江藤拓氏は11月11日の初登庁後、就任会見に臨んだ。このなかで、石破総理が掲げる「米増産」「米輸出拡大」に対して、「総理とよく話し合いをしなければならないと思っている」と述べるにとどめ、賛否についての明言を避けた。

《抱負》
 様々な思いはあるが、(自民)党で総合農林政策調査会長として、(食料・農業・農村)基本法の改正に深く関わってきた。なぜ基本法を改正したのか。それは、現状の変化を踏まえて、まず(農政の)憲法である基本法を改正し、基本計画をしっかり作り、農林水産業の予算を増額し、国民の期待に応える農林水産業を推進したいという思いから。(小里泰弘)前大臣は農政に精通した立派な方だ。しかし様々な要因が重なり、残念ながらこの業務に携わることができず、私がすることになったが、これも天の配剤だと思う。役所の中に入り、職員と実務を一緒にすることに非常にやり甲斐を感じている。責任があると思っているので、全力を注いでやっていきたい。
 これまでの国会とは違い、野党の意見にも真摯に耳を傾けていきたいと思っている。これまでは、与党の原案がそのまま通ることが多かった。もちろん与党として責任を持って、自信を持って法案を提出していたので、それが悪いということはない。しかし、私はさらに注意を促すべきだと思う。野党の先生方も、やっと現実路線になった。一定の責任を共有して、政策提言をしていただけると信じている。丁寧な質疑、丁寧な答弁などを心掛けていく。農林水産委員会、予算委員会などの様々な場面で、多様な角度で多様な意見が取り入れられ、最終的には良いものに昇華されていく国会運営ができればと思っている。

《米政策》
 ――石破総理は、総裁選の時から米の増産、輸出拡大に言及していたが、水活(水田活用の直接支払交付金)を含めた交付金や生産調整、備蓄米、輸出についてのお考えは。

 「生産調整」という言葉を当たり前に使っているのだが、生産調整はしていない。あくまでも農家の自主的な判断によって、飼料用米や酒米、畑に転換したりしている。
 米の値段が上がった、店頭から消えたのは「国のせいだ」という指摘も随分あった。農林水産業は、天候とはガチンコの勝負なので、天候不順はあり得ること。では、それを見越して多めに作っていくのかという議論もあるが、手取りを考えるとそういったことも出来ない。米の値段が上がり、消費者の「家計が苦しい」という気持はよく分かる。だが現場の声をそのまま伝えると、「ようやく我々が望んでる水準に近くなった」「これで頑張って米を作ろう」「ありがたい」と言っている農家もたくさんいる。我々は離農を防がなければならない。今回のことによって、農業の現場では「一息ついた」との声もある。
 総理の総裁選での発言も承知している。これについては、総理とよく話し合いをしなければならないと思っている。ただ輸出を沢山したいというのは全く同意。売りたいと言っても、買ってくれる人たちがどのくらいいるのかという問題もあるので、それを考えなければならないと思う。

 ――国民民主党は直接支払(交付金)の見直し、水活(水田活用の直接支払交付金)の水張り要件の見直しを掲げている。どうのように対応する考えなのか。

 私も党内で政調会長として、水活についても指導的な立場をとってきた。水活については、多分に誤解がある。例えば、「水路の整備をして水張りをしたら、役人が来て『代掻きをしないと認めない』と言われたので代搔きした」との話を聞いた。そんな要件にはしていない。まだ現場には誤解があると思う。農水省の職員にも数え切れないくらい現場での説明会をしてもらった。それでも混乱がある。なので、この制度自体が十分に理解されていないことが問題の一つ。
 もう一つは、会計検査院から本省や農協に監査が入った。それに何も手を付けずに我々が座して見ていたら、この制度自体が不適切であるという審判を下されるという大変なことになってしまう。会計検査院の指摘に沿った形で、現場の意見も活かしながら残すにはどうしたら良いのか、という難しい議論のなかで、今の状況になっているということを理解してほしい。
 これらについても丁寧な説明を委員会などでしていきたいが、一歩も動かないのかというと、それは別の話。この場で譲るとか見直すとかは言えない。活発な議論をして、受け止めて、自民党の調査会長にも農林部会長にも報告し、党内でもいかにあるべきかの議論をしてもらう。その上で新たな方向性が出るかもしれない。なので国民民主党を受け入れる受け入れないということには答えられない。
 直接支払いは、様々な考え方がある。例えば、日本は直接支払いの比率が低いとの指摘があるが、ヨーロッパに比べても、日本は金額ベースでは総農業生産に対して62%出している。だが農家の実感としては、ズレている部分もあると思う。急傾斜の中山間地域は直接支払いの対象にしているし、棚田地域振興法も作ったが、中山間地域には平らな農地はたくさんある。そこは条件不利地ではないのか、という疑問を私は昔から持っていた。畦畔を取って大きくすることが難しいところで営農を続けている方々や、中山間地域等直接支払交付金から漏れたところに対して、全く手立てがないのかというと、私は考える余地があるとずっと思っていた。
 国民民主党だけが動いているわけでは決していない。あらゆる政党の所属党員の意見も、委員会での質疑では尊重していきたい。

 ――農水省では、来年春の次期基本計画の策定に合わせて、令和9年度(2027)以降の水田政策の見直しについて議論されている。昨日、財務省から水田政策について指摘があった。令和9年度以降の水田活用の直接支払交付金の対象から飼料用米は外す提言や、備蓄米の備蓄量を減らす提言があった。この提言の受け止めと、今後の対応は。

 省内から止められたので、若干やわらかめの答弁に変更する。様々な意見があるだろうが、それは「一つの意見として承る」というだけ。それ以上言いたいが、今日はやめておく。

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