◇ 食料・農業・農村基本計画を閣議決定、農業構造転換を加速

 政府は4月11日、改正食料・農業・農村基本法に基づく、初の「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。改正基本法の基本理念に基づき、施策の方向性を具体的にまとめたもの。
 平時からの食料安全保障を実現する観点から、激動する国際情勢や人口減少などの国内状況の変化などに対応するため、この計画期間を5年間とし、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めるとしている。

 本基本計画は、食料・農業・農村基本法(平成11年施行)に基づき、おおむね5年ごとに見直す国の中長期農政方針。今回の改正では、食料自給率の目標以外にも、食料安全保障の実現に資する目標をKPIとして定めた。具体的には、生産コストの低減(米:60㎏15,944円〈2023年〉→13,000円〈2030年〉)を掲げたほか、農業分野の生産年齢人口(15~64歳)のうち49歳以下のシェアを「全産業並みに引き上げる」、農地面積427万ha(2024年)→412万ha(2030年)などを設定した。これら目標とKPIは、少なくとも年1回、達成状況を検証し、PDCAサイクルで施策の見直しを行うこととしている。

 また水田政策の見直しの方向性も示しており、水田を対象として支援する水活(水田活用の直接支払交付金)を、作物ごとの生産性向上などへの支援へと転換するとしている。
 品目ごとの対策として「米」に関しては、「消費」は、食生活の多様化や人口減少の影響により長期的な減少傾向が続き、2023年度の一人あたり年間消費量が51.1kgだったと指摘。一方、米粉やパックご飯の需要は拡大しており、その対応として中食・外食ニーズやインバウンド需要に応じた商品開発が必要だとした。「生産」は、農地の集約化やスマート農業の導入などで効率化を図っているものの、資材費などの高騰が課題だと指摘する。「環境への配慮」では、メタン削減や有機栽培の普及を進めるとし、「輸出」は、2024年は前年比+22%の4.6万tと好調で、低コスト生産体制の構築や有機米輸出を推進していくとした。「流通」は、多様なルートが拡大する一方、集荷の減少で円滑な供給に支障が生じたこともあり、事前契約の拡大や備蓄米活用を含む安定供給体制の強化を進めるとした。

 今後、農水省は本基本計画に基づき、関係施策の具体化を進めるとともに、定期的に進捗を管理し、国内外の情勢変化への対応を図る方針だ。

 4月11日の閣議決定を受けて、以下の通り農林水産大臣談話も公表している。

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改正基本法に基づく
初の食料・農業・農村基本計画の閣議決定に当たって

令和7年4月11日
農林水産大臣談話

 本日、改正基本法に基づく、初の食料・農業・農村基本計画が閣議決定されました。

 我が国の農業・農村は、国民に食料を安定供給するとともに、その営みを通じて国土の保全などの役割を果たしている、まさに「国の基」であります。
 しかしながら、我が国の食料・農業・農村を取り巻く環境は、国際情勢の不安定化や気候変動による異常気象の頻発化、人口減少や高齢化など、大きく変化しています。
 このような中、基本法について、これを時代にふさわしいものとするため、昨年、改正し、この改正基本法に掲げた理念の実現に向け、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進められるよう、この基本計画を策定しました。

 日本の農政は大転換が求められている、との自覚を持ち、生産基盤の強化、食料自給率・食料自給力の向上を通じ、食料安全保障を確保し、様々な環境の変化に対応するため、これまでの殻を破る大胆な政策転換を行います。
 このため、この基本計画では、水田政策の見直しの方向性を示し、その上で、生産性向上、付加価値向上や輸出の促進により農業経営の収益力を高め、農業者の所得の確保・向上を図るための具体的な施策を掲げました。加えて、国民一人一人の食料安全保障の確保のため、物理的・経済的食品アクセスの確保、農産物・食品を消費者の皆様へつなぐ重要な役割を果たしている食品産業の発展に資する取組を位置付けました。
 また、食料供給が環境に負荷を与える側面にも着目し、食料システム全体で環境負荷低減を図りつつ、多面的機能を発揮することとしています。
 農村について、農村人口の減少下においても、地域社会が維持され、食料供給機能、多面的機能が発揮されるよう、農村関係人口の増加に資する経済面・生活面の取組等の地域政策を推進し、これを産業政策との車の両輪として実施していくこととしています。
 さらに、基本計画の実効性を高めるため、目標・KPIの設定を行い、PDCAサイクルによる施策の不断の見直しを行うことを新たに打ち出しております。

 この基本計画を実行し、食料・農業・農村の未来を築くためには、生産者、食品事業者、消費者の皆様など食料システムの関係者・関係団体間の相互理解と連携・協働の下、共に歩んでいくことが重要です。国民の皆様の御理解とお力添えを賜りますよう、お願い申し上げます。

農林水産大臣 江藤拓

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