◇ 主食用米への直払導入も「先入観を排して検討」、小里農相就任会見

 石破内閣にあって農相に就任した小里泰弘氏は10月2日の初登庁後、就任会見に臨んだ。このなかで、改正基本法に基づく新たな食料・農業・農村基本計画の策定にあたって、主食用米への直接支払の導入も「先入観を排して検討していく」との見解を示した。

《抱負》
 農水省の最も大事な使命・役割は、国民の皆様に安心・安全な食料を安定的に供給していくことであると思っている。そのために、食料安全保障の強化・確立に全力で取り組んでまいる決意。具体的には、先の通常国会で成立した改正食料・農業・農村基本法に基づく新たな基本計画を今年度中に策定する。基本計画の策定にあたっては、世界の食料をめぐる情勢の変化、気候変動などによる自然災害の多発、栽培適地の変化がある。そして、人口減少による需要の急減、農業従事者の問題。昭和の世代で日本の農業を中心となって担っていただいた方々、団塊の世代といった方々が、これからさらに減少して現場から引退される。そういった担い手の問題は、農業従事者の確保が大きな課題としてある。こうした課題を背景として、新たな基本計画ではしっかりと中身を詰めていく。
 第一に、食料安全保障の強化、環境と調和のとれた食料システム、みどり戦略を中心にしっかり確立していきたい。農業の持続的発展として、農業経営者、農業者の皆様が、将来を思い、希望を持って従事していける環境を作っていきたい。
 農村の振興は、地域政策を含めてしっかりあたっていく。特に、輸入依存度の高い、別の観点から言えば麦、大豆、飼料作物といった食料自給率の低い品目をしっかりと増産をしていく。また、水田政策の見直しにもしっかり当たっていきたい。
 初動の5年間を農業構造転換集中対策期間と位置づけ、集中的、計画的にあたっていく。農業者の所得向上、地域の活性化は、特にこの1年間、総理補佐官として地域活性化を担当して、色々な現場を回ってヒントを集めてきた。そういったところをしっかり横展開していく。持続的な食料供給に必要な合理的なコストを考慮した仕組みの法制化も次期通常国会に関連法案の提出に向けて作業を急ぐ。

《米政策》

 ――総裁選を通じて石破総理は、水田活用を含めた米政策について、とりわけ世界でお金を出して米の生産量を減らしている国はないと、政策路線に否定的な考え方を示した。それを踏まえて、どのように水田政策に関する見直しを行う考えか。加えて5年間の集中対策期間を今後どのように進めていく考えか。
 米政策をめぐっては、私が国会議員になった当初から最も大事な農業・農村の存続に関わる課題として取り組んできた。まずは、水田を水田としてしっかり生かしていく方法はないかといったところからだが、例えば飼料用米を中心とした新たな需要と供給のあり方を踏まえた政策を展開してきたところ。そういったなかで石破総理のお話があった。石破総理は、従来減反はない方が良いということで、私が農林部会長の時に当時の石破幹事長から、そういった指摘・指示もいただいた。需要に応じた生産自体は、石破総理もこれを否定しているわけではなく、むしろお考えの中心にあると。食料安全保障の強化をはかる観点からも、将来にわたって安定して運営ができる水田政策のあり方をあらかじめ示すことが出来るように、総合的に検討したい。今年度中に策定する基本計画の見直しのなかで、水田政策についても、しっかり構築したいと。
 集中対策期間は、令和7年度(2025)の概算要求において、今回の基本法の改正を踏まえ、初動の5年間を集中対策期間として位置づけている。これを加速していくために、2兆6,389億円を要求した上で、食料安全保障の強化、国土強靭化、TPPといったところは、事項要求として予算編成過程で、改正基本法に基づく施策を的確かつ着実に推進するため、補正予算も含めてあらゆる機会を捉えて必要な予算の確保に努めていく。

 ――「減反」と「需要に応じた生産」の違いは?
 減反と需要に応じた生産は全く概念が違う。一例だけ言えば、従来、飼料用米を中心とした需要に応じた生産、水田フル活用を進めてきた。これを議論した当時に戻って考えると、水田を水田として使っていくために飼料用米、米を米として作っていこうと。これを進めていけば、不作付地まで生産・作付ができる。その意味では、減反どころかむしろ増反になると。そういう議論もしたことを思い出した。基本的に2つの概念、減反と需要に応じた生産は、「違う」ということはご認識いただきたい。総理ご自身が「需要に応じた生産」を基本に置いておられるので、そこを踏まえながら、日本の農地が活きていくように取り組んでいく。

 ――石破さんは総裁選で輸出をかなり意識していた。米政策の見直しのなかのテーマとして位置づけるのか。
 当然、農政における大きな戦略の一つとして、農林水産物の輸出促進はあるわけで、米についても、輸出がさらに拡大をしていくように、色々なご意見を伺いしながら総合的に支援をしていきたい。

 ――石破首相は総裁選で、米の生産調整を見直し、増産に舵を切るべきだと主張され、米価の下落には直接所得補償で対応すべきだと述べていた。
 民主党政権において展開された戸別所得補償。これは色々お考えになって進められたことだと思っているが、例えば農業者の創意工夫、日々の努力にブレーキをかけることにならなかったかというような問題提起もある。また農地の集積・集約化が進まないという――実際、あの期間において農地の集積・集約はほとんど横這いだった。そういったところも懸念されたし、生産性の向上が阻まれることになるのではないかと、色々ご指摘があったところ。農業者の所得向上をめざしていく、これは我々がこれからしっかり励んでいかないといけない最大のテーマであると思う。そのため直接支払を中心にしながら、総合的にご意見、与党のご意見もお伺いしながら、進めてまいりたい。

 ――すると水田政策の見直し検討のなかで、直接支払も検討に入る?
 水田政策に限らず、全体をしっかり捉えていきたい。

 ――今まで農水省は、主食用米の直接支払に対して、先の通常国会でも否定されてきたが?
 今回はあらゆる先入観を排して、総合的に、農家が意欲を持って、農業に従事し、生産を高めていくことができる、農家の所得向上に繋がる、そういった政策をしっかり模索していきたい。

 ――「先入観を排して」ということは、今の非主食用米、飼料用米を中心に交付金を手厚く配分し、主食用米の価格をある程度コントロールするということか?
 例えば輸出の話があった。主食用米を輸出していく、輸出の拡大をはかっていく、そのなかにおいても、支援を工夫しながら総合的に考えていく。そういう意味で、品目を問わず、今までの概念から脱却して、それぞれの現場の方々のご意見、党のご意見を聞きながら、どうすれば効果的に農業者の所得が上がっていくかを念頭において、考えていきたい。

 ――輸出については、「新市場開拓用米」としてすでに支援している。その延長線上での話という理解でいいのか。
 今年度中に、改正基本法に基づいて基本計画を見直すなかに入っている。水田政策もそのなかでしっかり検討していく。

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