◇ お米未来展講演①神明 藤尾社長「持続可能な農業実現の必要性」訴える
2025/4/15/ 13:45
日本食糧新聞社(東京都中央区、今野正義会長、杉田尚社長)主催の「FABEX(ファベックス)東京2025」が4月15日、東京・江東区の東京ビッグサイトで開幕した。既報の通り、同時開催の「第4回お米未来展」では、会期中14プログラムの「特別セミナー」が企画されている。そのなかから、15日に登壇した㈱神明(東京都中央区)藤尾益雄社長の講演内容を紹介する。
藤尾社長は、「神明グループの挑戦~日本の食と農業を守るため~」と題して、〝令和の米騒動〟や昨今の米価高騰など、米流通の現状と農業構造の展望について報告。日本の米を取り巻く環境が急速に悪化するなか、農業のプラットフォーマーを目指す企業として、持続可能な農業実現の必要性を訴えた。

もともと川中事業から始まった神明グループ。藤尾社長が就任した2007年以降、「米の消費を何とか増やさないといけない」との考えのもと、パックごはん事業や外食事業、さらには生産支援へと、川上・川下への事業を拡大。国内最大級の米卸としての強みを生かし、生産地から食卓までを繋ぐ「アグリフードバリューチェーン」の構築を進めている。
富山・入善町に設立した㈱ウーケは、無添加で健康志向な製品や、幼児向けの柔らかいパックごはんなど、多様な無菌包装米飯を展開。製造量は年1億1,400万食に達し、今後は第4工場の稼働によって1億5,000万食規模に拡大する予定となっている。他方、外食分野では、元気寿司㈱(現㈱Genki Global Dining Concepts)への出資により、国内外で寿司業態を拡大。これら事業は、インバウンド需要を背景とした米消費拡大に寄与しているという。
また米専門店「益屋」での付加価値米の販売や、JR東京駅構内でのテイクアウトおにぎり専門店「TARO TOKYO ONIGIRI」などを通じて、消費者との接点も強化。究極のファストフード、ジャパニーズスーパーフードだという〝おにぎり〟への支持が高まっていることを背景に、米消費拡大に繋げていく狙いだ。
川上への展開としては、静岡・菊川市の農業法人に出資して、農業のノウハウを継承しつつ〝儲かる農業〟のビジネスモデルを構築を進めている。このほか、新品種「ふじゆたか」の育成、JAXA認定の宇宙ベンチャー㈱天地人と連携した人工衛星データ活用による「宇宙と美水(そらとみず)」の開発にも着手。加えて生産法人への出資・支援を通じて、全国に農業支援ネットワークを構築している。
2023年には、埼玉・加須市に㈱神明アグリイノベーションを設立。若手農業者の育成拠点として、大規模生産法人の経営ノウハウなどを提供。持続可能な農業の実現に向けて、人材育成の面からサポートしている。
藤尾社長は最後に、国内生産・安定供給を確保し、農業を成長産業に転換させるためには、神明グループが中心となった農業支援のプラットフォーム構築が不可欠だと指摘。人材育成・派遣、作業代行、資材供給、契約栽培、資金支援など、多面的な支援体制の整備を進める方針を改めて示した。「日本の農業・日本の食を守る」使命のもと、今後も「日本の食をずっと未来にまで受け継いでいくための挑戦を続けていく」と語った。

